金融研究 第25巻第1号 (2006年3月発行)

1930年代前半における日本のデフレ脱却の背景:為替レート政策、金融政策、財政政策

梅田雅信

 1930年代前半、日本は急激なデフレに見舞われたあと、早期にデフレ脱却を果たすという、いわばV字型の大幅な物価変動を経験した。本稿では、1930年代前半における物価変動の特徴について整理したあと、日本の特異な物価変動の要因について定量的分析を試みる。まず、内外卸売物価について、最小二乗推計および因果関係テストを行うと、日本の物価は海外物価や為替レートの変動から大きな影響を受けていたことがわかる。次に、こうした対外的要因に、需給要因や財政金融変数を織り込んで6変数VARを推計する。各種構造ショックに対する国内物価の累積的反応と分散分解の結果をみると、日本の物価に対しては、海外物価要因や為替レートが相対的に強い影響を与えていたことが確認できる。これに対して、残りの3つの変数が及ぼす影響は、いずれもプラスの方向で有意ながら、前2者に比べれば格段に弱く、おのおのの影響度の強さは、需給ギャップ、金融変数、財政変数の順になるとの結果が得られた。

キーワード:物価の国際間の連動性、為替レートの下落放任、金融変数、財政変数


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