本稿では、2001~03年のマイクロ・データを用いて、従来のマクロ時系列データの分析から得ることのできなかった家計の現金・預貯金需要に関する多くの定量的な結果を得た。第1に、資産需要においては、「組合せの選択」(ある金融商品を保有するかどうかの選択)における変動のほうが、「金額の選択」(保有している金融商品の金額の選択)における変動よりもしばしば重要であることを示した。第2に、現金需要の変動要因に関して、家計の個票データを用いて詳細な分析を行った。第3に、定性的な質問項目を生かして、低金利による資産需要の変動と家計が貯蓄の安全性を高めるための対応策をとったことによる資産需要の変動を区別した推定に成功した。第4に、金融教育普及の経済効果を明らかにした。
キーワード:貨幣需要、低金利、金融不安、マイクロ・データ、自己選択バイアス、金融教育、組合せの選択、金額の選択
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