金融研究 第23巻第3号 (2004年10月発行)

デフォルト・コストの観点からみたデフレのコスト分析

福田慎一、粕谷宗久、中原伸

 本稿では、近年続いているマイルドなデフレ下で発生する負債デフレ(debt-deflation)の弊害を、上場企業(含む店頭・地方上場)の財務データをもとに期待デフォルト・コストの観点から検証した。分析では、期待デフォルト・コストは、デフォルト・コストと倒産確率の積として算出される。プロビット・モデルを用いた倒産確率の推計では、実質債務残高や特別損失は倒産確率に対して有意にプラスの影響を、メイン・バンクの自己資本比率は有意にマイナスの影響を及ぼした。この結果から、販売価格下落による収益の圧迫や実質債務負担の高まりや、株価下落による特別損失の増加とメイン・バンクの体力低下などは、企業の倒産確率を有意に上昇させることがわかる。この結果を用いて、価格変動が期待デフォルト・コストに与える影響を分析してみると、一般物価の下落は、地価や株価に比べてその下落率がマイルドな場合でも、実質債務負担の上昇が企業の期待デフォルト・コストを上昇させることが明らかになった。ただし、上場企業のみを対象とした本研究では、マイルドなデフレ下における負債デフレのコストは、金額ベースでは限定的なものにとどまった。

キーワード:デフレ、デフレのコスト、倒産確率、デフォルト・コスト、プロビット・モデル、順序プロビット・モデル


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