金融研究 第22巻第1号 (2003年3月発行)

いわゆる「追い貸し」について

関根敏隆、小林慶一郎、才田友美

 「追い貸し」という言葉の定義は必ずしも一義的ではないが、経営再建の見込みが乏しい先に貸出を継続または拡大することを指すことが多い。追い貸しがおこっていれば、既に債務比率が高い先から貸出が十分に回収されず、債務比率が高まるにつれ、貸出の減少幅が小さくなる(あるいはさらに進んで、貸出が増加する)といったように、貸出と債務比率が非線形な関係となることが予想される。しかも、高債務先で貸出を受けたところほど収益性が低下する傾向があれば、こうした企業への貸出が、経営再建の見込みの乏しい貸出という意味で、追い貸しであった可能性が高い。パネル・データを用いた実証分析の結果、バブル崩壊後、建設・不動産といった非製造業部門を中心に非線形性が顕著になったことがわかった。また、これらの企業では、高債務先で貸出を受けたところほど、収益性を低下させる傾向があることも確認された。これらのテスト結果は、こうした企業への貸出が、追い貸しであった可能性が高いことを示唆している。

キーワード:追い貸し、不良債権問題、ダイナミックGMM


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2003 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム