金融研究 第21巻別冊第1号 (2002年6月発行)

名目GDP推計における金融仲介サービスの計測法について

長野哲平

 金融機関は金融仲介サービスの提供を通じて、大きな役割をはたしているにもかかわらず、国民経済計算体系(以下SNA)では金融仲介サービスが捕捉されておらず、GDPが過小評価されているとの批判が長らく存在してきた。SNAの新しい国際基準である93SNA(System of National Accounts 1993)では、このような批判を踏まえ、FISIM(financial intermediation services indirectly measured)という方法で金融仲介サービスを捕捉しGDPに加算することを提唱しているが、同手法はさまざまな問題点を内在している。本稿では、(1)FISIMの理論的な問題点を指摘し、(2)こうした問題点を回避する手法としてユーザー・コスト・アプローチを提示したうえで、両手法に基づき、わが国における金融仲介サービスの計測を行い、結果を比較する。その結果、名目金利がゼロ近傍まで低下した1998年度以降については、FISIMによる計測結果とユーザー・コスト・アプローチによる計測結果には大きな乖離が認められ、名目GDP成長率にも無視できない差が生じることが示された。

キーワード:金融仲介サービス、SNA、FISIM、ユーザー・コスト・アプローチ、シャドー・プライス


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