営利企業以外の主体に適用される会計(「公会計」)のあり方を考えるに当たっては、公会計基準の内容のみならず、その設定機関や設定手続についての検討も重要である。こうした観点から、本稿では、公会計先進国の1つであり、制度設計面でわが国の参考になる点が少なくないと考えられる米国の公会計制度を取り上げ、その歴史的経緯および現行制度の仕組みについて考察した。
その結果、米国公会計制度の主な特徴としては、(1)公的主体を連邦政府、州・地方政府、非営利組織体の3つにグループ化し、それぞれのグループごとに共通して適用される会計基準を設定することで、主要な活動目的等を同じくする公的主体の間での会計報告の統一性、比較可能性の確保が図られていること、(2)いずれの制度においても、中立性の高い専門機関が、公開主義に基づく適正手続に則って継続的かつタイムリーに会計基準の設定を行っていること、(3)各制度間では、対象となる公的主体の公的色彩の度合いに応じて、政府機関の関与の程度や企業会計との類似性にグラデーションがみられること、が挙げられる。かかる特徴およびその背景にある考え方は、わが国の公会計制度のあり方を検討していくうえでも参考になろう。
キーワード:公会計、会計基準設定機関、米国公会計制度、FASAB、GASB、FASB
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