金融研究 第20巻別冊第1号 (2001年4月発行)

信用リスクのある金融商品のコックス過程を用いたプライシング方法

丸茂幸平、家田明

 信用リスクのある金融商品のプライシングで重要となるのがデフォルト事象の扱いである。デフォルト事象を数学的に取り扱う方法として、ポアソン過程によるものがある。これは、各瞬間における「デフォルトの起こりやすさ」を表す強度を定義し、この強度を持つポアソン過程の最初のジャンプをデフォルトとみなす方法である。ただし、ポアソン過程による定式化を行う場合には、デフォルト強度が確定的であるという仮定が必要である。コックス過程では、この仮定を緩和し、デフォルト強度が確率過程である場合を扱う。
 本稿では、ランドによって示された、コックス過程を用いた信用リスクのある金融商品のプライシングの枠組みを、数学的証明を展開しつつ解説すると共に、コックス過程を用いた信用リスクのある金融商品(クレジット・デリバティブズ等)のプライシングの具体例についても解説を行う。さらに、実際のプライシングで活用されることが多いダフィー等によるプライシング・モデルとの関係を説明する。信用リスクのある金融商品のプライシングを実際に行う場合には、実務上の制約(データの制約等)から、理論モデルに何らかの仮定を置くことでモデルを扱いやすくすることが多いが、理論の数学的内容を理解しておくことは、こうした実務上の制約や各種仮定が与える影響等を認識・評価するために重要である。

キーワード:信用リスク、プライシング、クレジット・デリバティブズ、ポアソン過程、コックス過程


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2001 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム