金融研究 第20巻第1号 (2001年1月発行)

米国におけるリミティッド・ライアビリティー・カンパニー(LLC )およびリミティッド・ライアビリティー・パートナーシップ(LLP )について
―閉鎖会社立法への一提言―

大杉謙一

 本稿は、1990年代におけるアメリカ各州におけるLLC・LLP立法の発展を紹介し、その日本法への示唆を探ろうとするものである。アメリカの州LLC・LLP法との比較によって明らかになるのは、日本の組織法(組合や各種の会社に関する法)が、組織内部の法律関係の自治を認める度合いが小さく、また、構成員(組合員、社員、株主)の責任を有限責任とすることに慎重であり、それを認める場合にも厳格な規制を課していることである。これまで暗黙に前提とされてきた組織法の強行法規性、資本制度による有限責任から生じる弊害への対処、というテーゼは、自明のものではない。本稿は、アメリカのLLC等に関する法を参考にしながら、日本法の短期的な課題として、債権者保護制度の再考(特にその費用を削減するいくつかの方法の提案)、閉鎖会社における持分の払戻しの容認、閉鎖会社における内部関係の自治の容認を主張し、また中期的な課題として、資本制度の根本的な再検討を主張する。かかる規制緩和から生じ得る弊害への対処として、契約自由の限界、裁判所による衡平法上の救済、詐害的譲渡法理による債権者保護等のアメリカのLLC法における対処を日本法に取り入れることも検討課題となる。

キーワード:有限責任、資本制度、衡平法上の救済、詐害的譲渡、任意法規化、閉鎖会社、組合


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