金融研究 第20巻第1号 (2001年1月発行)

政策評価と公会計改革のあり方

宮田慶一

 本稿では、政策評価と公会計はそれぞれどのようなものであり、どのような関係にあるのか、あるいは、公的セクターの効率化とどのように関連しているのかといった問題を、こうした分野の先進国であるアングロサクソン諸国の例を参照しつつ、整理・検討した。
 公的主体の評価を行ううえでは、会計による財務的な評価と非財務的な評価をいかに組み合わせるかがポイントになるが、この点、アングロサクソン諸国における中央政府の例をみると、「市場メカニズム活用型」と「総合評価型」の2つの政策評価システムに大別し得る。ニュージーランドやイギリスに代表される「市場メカニズム活用型」の政策評価システムは、財務的評価重視のシステムであり、公的主体にかかる会計を民間と比較可能な形に加工し、公的サービスを民間部門と擬似的な競合状態に置くことにより効率化を進めていくことが特徴である。一方、アメリカに代表される「総合評価型」の政策評価システムは、財務的な評価と非財務的な評価の双方を政策評価システムの両輪として捉え、アカウンタビリティ、あるいは受益者からの評価のフィードバックを重視することにより、効率化を進めていこうというものである。
 どちらの政策評価システムが望ましいかは、評価の対象となる公的主体の特徴、行政改革の基本理念、あるいは当該国の歴史・制度的要因にも依存するために一概にはいえないが、わが国においても適切な政策評価システムを構築すべく、今後十分に議論を重ねていくことが重要である。

キーワード:公会計、政策評価、規律づけ、NPM 、アカウンタビリティ


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