金融研究 第19巻第4号 (2000年12月発行)

第9回国際コンファランス
 ─「低インフレ下での金融政策の役割:デフレ・ショックと政策対応」─ 議事要旨

 金融研究所は、2000年7月3、4日の両日、「低インフレ下での金融政策の役割:デフレ・ショックと政策対応」とのテーマで第9回国際コンファランスを開催した。
 今回のコンファランスは、インフレ率が低い状況のもとで、典型的にはわが国においてみられたような資産価格バブルの崩壊などのデフレ・ショックが生じた際に、金融政策の果たし得る役割と政策運営の課題について議論することを目的としたものであった。特に、低インフレ下においては、名目金利がゼロに近づくと、金利引下げを通じた通常の金融緩和政策に限界がある点などを念頭におく必要がある。今回のコンファランスでは、現実の政策運営への含意を意識し、1930年代の米国大恐慌期等の歴史的経験や1990年代の日本の経験への理解を深めつつ、理論的、実証的な分析のほか、中央銀行エコノミストや政策担当者の実務的な観点も織り交ぜて議論を行うことが企図された。
 こうした問題意識に基づき、コンファランスでは、速水総裁の開会挨拶、メルツァー、テイラー両金融研究所海外顧問の基調講演の後、以下の4つのセッションに分けて討議が行われるとともに、最後に、コンファランス全体を総括するパネル・ディスカッションが行われた。
 第1セッション「資産価格変動とデフレの下における金融政策に関する概観」では、1990年代におけるわが国の資産価格バブル崩壊後の経済動向と政策対応について検討するとともに、1930年代における米国のデフレ等の歴史的経験について比較分析を行った。第2セッション「波及メカニズムと構造的な硬直性」では、金融政策の効果に影響を与える構造的要因のうち、金融システムの安定性と雇用調整に焦点を当て、その金融政策の波及経路や効果に与える影響が議論された。続く第3セッション「期待形成と金融政策」では、金融政策運営における期待形成の役割のほか、1997~98年に生じた金融市場危機前後における価格形成メカニズムの変化とその金融政策運営上の含意について検討が加えられた。第4セッション「低インフレ・低金利の金融政策運営上の含意」では、日本の経験を基に、名目金利の非負制約を考慮した開放体系下での金融政策、ゼロ金利下での金融調節手段とその波及経路、政策運営の枠組みについて議論が展開された。最後に、中央銀行関係者3名および当研究所海外顧問2名からなる総括パネル・セッションを行い、低インフレ下での金融政策の役割に関し、その理論上、実践上の課題について議論が行われた。


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