本稿では、日本のコール市場において、無担保翌日物コールレートと準備預金残高の間に「流動性効果」と呼べる関係が存在するかを分析する。法定準備預金制度のもとでは、積み期間中のどの日の準備預金も同様に法定準備金にカウントされる。それにもかかわらず、流動性効果があると積み期間中の日々の準備預金は完全に代替的にならず、準備預金需要とコールレートの間に負の関係が発生する。しかし、日銀は日々の金融調節を通じてコールレートが望ましい範囲に推移するように準備預金を供給するので、この流動性効果をコールレートと準備預金残高の間の相関関係から推定することはできない。本稿では、日中複数の時点で観測されるコールレートのデータを利用して、この問題を解決する。流動性効果の推定にあたっては、次の点を考慮に入れる。第1に、日本では日中決済の時点が複数回あり、異なる決済時点のコールレートの水準は異なる要因に依存する。特に、為決と呼ばれる5時決済のコールレートは、いわゆる「積み上幅」に依存する。第2に、準備預金の増減要因である銀行券要因と財政要因のうち事前に予想される部分は、日銀の金融調節によって完全に相殺されている。このような制度的条件のもとでは、朝方のコールレートの変化と予期せざる銀行券要因の相関から流動性効果が推定できることが示される。
キーワード:コールレート、準備預金、積み上幅
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