日本銀行金融研究所では、法律学研究の一環として、1998年1月に、憲法・行政法・商法学者を構成メンバーとする「公法的観点からみた中央銀行についての研究会」を設置し、現行日本銀行法の下における日本銀行の法的性格と運営のあり方について議論を行ってきた。本研究会では、日本銀行の作用面と組織面とを分けて検討するアプローチをとり、まず、昨年10月に、日本銀行の作用(業務)に関する検討結果を取り纏めた報告書「公法的観点からみた日本銀行の業務の法的性格と運営のあり方」を公表した(同報告書は、『金融研究』第18巻第5号<1999年12月>に掲載されている)。
今回の報告書「公法的観点からみた日本銀行の組織の法的性格と運営のあり方」は、その後に行われた日本銀行の組織に関する委員方(塩野宏、神田秀樹、宇賀克也、安念潤司の各氏)の検討結果を、事務局(日本銀行金融研究所)が取り纏めたものであり、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではない。
本報告書では、日本銀行の組織に関する法的分析として、主に、以下の3つの問題について論じている。
第1は、日本銀行の法的位置付け、すなわち、法的観点からみて日本銀行を行政権の一部門と捉え得るかどうかという問題である。第2は、日本銀行が国との関係において有するいわゆる「独立性」とはどのようなものであり、また、それは憲法上どのように位置付けられるかという問題である。第3は、日本銀行の組織運営のあり方をどのように考えるかという問題であり、最近のコーポレート・ガバナンスに関する研究成果等を踏まえつつ、検討を加えている。
本報告書の構成は、以下のとおりである。まず、第I章において問題提起を行った後、第II章において次章以降の分析の対象となる日本銀行の組織の概要を整理している。次に、第III章では、日本銀行の法的地位について分析し、第IV章では、日本銀行と国との関係について、日本銀行の「独立性」の意味、及び、日本国憲法下における日本銀行の「独立性」の位置付けという2つの論点を取り上げ、検討を加えている。そして、第V章では、コーポレート・ガバナンスの観点等を踏まえた日本銀行の組織運営のあり方について論じている。最後に、第VI章では、本研究会の分析・検討の結果を小括している。
(本報告書は、当初、2000年5月に公表された。その後、『金融研究』への掲載〈2000年9月〉に当たり、若干の編集上の変更が加えられている。)
掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。