デリバティブの会計上の定義は、デリバティブに関する会計基準の適用範囲を決定するための出発点となり重要な問題である。そこで、本稿ではデリバティブに該当するか否かが明確ではないとされてきたデリバティブ類似取引のうち、クレジット・デリバティブとコミットメント・ラインを取り上げ、その仕組みや米国での考え方、わが国における会計上の取扱いを整理した。
わが国では、1999年1月に企業会計審議会より、金融商品の包括的な会計上の取扱いについて定めた「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品意見書」とする)が公表された。しかし、ここでは、デリバティブ取引を例示列挙するに止め、概念的な定義がなされていない。また、日本公認会計士協会会計制度委員会から2000年1月に「金融商品会計に関する実務指針(中間報告)」が公表され、デリバティブの概念整理および既存のデリバティブ類似取引と考えられるクレジット・デリバティブやコミットメント・ラインの会計処理について指針が提示されているものの、デリバティブであっても時価評価されない余地があるとされていること等に鑑みると、デリバティブの会計上の取扱いに関する不確実性は必ずしも解消されていない。デリバティブをはじめとした金融商品の概念規定は、資産、負債の定義など根本に係る問題ともいえるため、今後も引き続き検討が必要なものと考えられる。
キーワード:デリバティブ、クレジット・デリバティブ、コミットメント・ライン
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