金融研究 第18巻第5号  (1999年12月発行)

ゼロ・インフレ下の金融政策について
― 金融政策への疑問・批判にどう答えるか
―コメントおよびリジョインダー

ロナルド・I・マッキノン、アラン・H・メルツァー、翁邦雄

 本稿は、翁邦雄「ゼロ・インフレ下の金融政策について」(『金融研究』1999年8月/第18巻第3号)に対するマッキノン・スタンフォード大教授とメルツァー・カーネギーメロン大教授のコメント、およびそれらに対する翁のリジョインダーをまとめたものである。マッキノン教授は、1970年代以降の趨勢的な円高を受けた「長期円高期待」こそが日本経済低迷の根本原因であるという自説を展開したうえで、追加的金融緩和の限界に理解を示し、日米両政府による協調介入を通じて長期円高期待を終焉させる必要性を強調している。一方、メルツァー教授は、現在の円高は金融緩和が不足している証拠にほかならないと述べ、長期国債やドルを買い入れることによって、マネタリーベースを拡大させることを提唱している。これに対し翁は、①物価が安定し米国の大恐慌期のようなデフレスパイラルと状況が全く異なる限り、これ以上副作用の大きい非常手段は発動すべきでない、②長期国債の大幅な買いオペ増額は、日本銀行のバランスシートを大きく毀損させ、ソブリン自体への信認を揺がす副作用があり得る、④行き過ぎた円高が日本経済の安定を揺がす問題になり得る場合には、効果が不確実で副作用の大きい「追加的緩和」よりゼロ金利政策の維持と無制限介入で対応すべきである、などの理由を挙げてメルツァー教授の提案に反対している。

キーワード:金融政策、ゼロ金利、長期金利、インフレーション・ターゲッティング、国債買い切りオペ、量的緩和、超過準備、ベースマネー、バランスシート問題、流動性の罠


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