金融研究 第18巻第5号  (1999年12月発行)

貸出債権譲渡における根抵当権の移転について

鈴木淳人

 営業譲渡や不良債権のバルク・セールスなど金融機関が貸出債権を譲渡する場面が増加してきており、それに伴って根抵当権付債権の譲渡における問題点も顕現化しつつある。本稿は、まず、根抵当権の特徴、根抵当権により担保された貸出債権を譲渡する場合の実務、およびその問題を整理する。そのうえで、平成10年に施行された「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(金融再生法)」および「金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律(根抵当権臨時措置法)」について検討を加え、これらの法律で採用された特例の適用範囲を拡張することが可能であるか否かを考察する。こうした考察を踏まえ、本稿では、結論として、①元本「確定前」の根抵当権譲渡に関しては、少なくとも金融機関による営業譲渡であれば元本確定前であっても随伴性を肯定すべきであり、その場合、金融再生法で採用された特例を金融機関の営業譲渡一般に拡張する余地があること、および、②元本「確定後」の根抵当権譲渡に関しても、根抵当権臨時措置法で採用された特例を拡張する余地があることを導いている。

キーワード:担保法、債権流動化、営業譲渡、根抵当権、随伴性


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