金融研究 第16巻第4号 (1997年12月発行)

サプライ・ サイド情報を利用した消費に基づく資本資産価格モデルの推計

北村行伸、藤木裕

 本論文では一般均衡分析の枠組みに則り、実質資産収益率の代理変数として資本の限界生産性を用いて、消費に基づく資本資産価格モデル(C-CAPM)をテストした。資本の限界生産性を実質資産収益率の代理変数として用いるに当たっては、生産の資本に関する弾力性が資本分配率と等しくなる、という関係を用いることによって、生産関数の特定化に伴う資本の限界生産性の推計誤差に配慮したほか、公的資本の存在に伴う資本の限界生産性の推計値への影響を考慮した上で分析を行った。本論文の主要な結論は以下の2点である。
 第一に、実質資産収益率として、民間資本のみを考慮した資本の限界生産性を用いるか、または公的資本を含む資本の限界生産性ないし金融債事後的実質金利を用いるかで主観的割引率の推計値はかなり変動する。
 第二に、これまでの一般化積率法(Generalized Method of Moments)による推計では相対的危険回避度一定の効用関数から理論的に見て妥当な相対的危険回避度の値を得ることは困難とされてきたが、資本の限界生産性を用いた場合、妥当な正の値をとるパラメータが得られている。


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