ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 1997-J-16

AES(Advanced Encryption Standard)について

宇根正志

AESは、現在最も広く利用されている暗号アルゴリズムであるDES(Data Encryption Standard)の後継として、米国政府が策定しようとしている次期米国政府標準暗号の名称である。本年1月、米国政府は、AESのアルゴリズムを公募によって選定する方針を発表した。これは、近年のコンピューター処理能力の向上に伴って、DESの強度が徐々に低下してきており、今後より強度の高い暗号アルゴリズムが標準暗号として認定される必要が高まっているとの認識が強まっているためである。その後、米国政府は、暗号研究者や暗号ユーザーからのコメントを織り込み、本年9月、AESのアルゴリズムの要件、評価基準や今後の選定スケジュールを決定、公表している。

本稿では、AESのアルゴリズムの要件・評価基準決定に至るまでの経緯を、インターネット等から入手した資料を基に整理し、AESの公募方法に関する暗号研究者や暗号ユーザーのコメントを紹介する。米国では、DESが金融ネットワークの安全性確保のために広く利用されており、金融分野における新標準暗号選定への関心は非常に高い。このため、中央銀行(FRB )や銀行協会(ABA)等は、こうした新標準策定作業に積極的に関与している。今回決定されたAESの要件・評価基準にも、FRB等のコメントの多くが採用されている。

今後、AESがDESに代わって米国政府標準暗号として認定されると、金融業務を含めた様々な分野で採用される可能性が高い。こうした観点からも、AESの認定を巡る動きについては、引き続き注視していく必要があるものと考えられる。

キーワード:AES、DES、NIST、共通鍵ブロック暗号、米国政府標準暗号


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