2024年6月に成立した「事業性融資の推進等に関する法律」(以下、「事業性融資推進法」という。)によって新設された企業価値担保権は、ノウハウ等の無形資産を評価対象とするため、有形資産に乏しいスタートアップ企業の資金調達への活用が期待されている。本稿は、企業価値担保権制度を利用して融資を行う金融機関とスタートアップ企業の株主の間で利害対立が生じうる局面を明らかにし、それらの局面における株主の権利の処遇等について分析・検討を行うものである。事業性融資推進法上、企業価値担保権の設定時には、原則として取締役会決議が求められるにとどまり、企業価値担保権の実行時にも株主の関与は求められていない。しかし、担保権実行として行われる事業譲渡においては、債務超過が要件となっておらず、株主は残余利益を有している可能性があるところ、そのための権利保護に資する手続が十分ではない可能性がある。企業価値担保権という新しい制度のもとでも、金融機関のみならず株主の権利の保護も適切に図ることが、スタートアップ企業の資金調達の促進に繋がりうると考えられる。
キーワード:企業価値担保権、スタートアップ企業、種類株式、拒否権条項、事前承諾条項、事業譲渡
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