本論文では、融資機関が取得・利用し得る情報に関する先行研究を広くサーベイし、「融資実務においてどのような情報がどの粒度で実際に取得・利用されているか」、「他の情報と比べて、会計情報に代表されるハード情報はどのような状況下で重視されるか」、を未解明の論点と整理した。それら論点について、日本の融資機関を対象にしたインタビュー調査を実施した結果、主に以下のような示唆を得た。第1に、融資機関には、定量化された情報(ハード情報)である会計情報を中心としつつ、広範な情報取得に努める実務慣行が根付いている。第2に、融資意思決定時にはハード情報および容易に定量化できない情報(ソフト情報)が同程度に、継続的モニタリングでは主にハード情報、救済の意思決定時には主にソフト情報がそれぞれ利用される傾向にある。第3に、非上場企業のように監査済み会計情報に依拠した融資が困難な場合にはソフト情報で補う実務慣行が存在する。こうした結果は、先行研究で想定されている融資機関の行動の解像度を高めるとともに、融資機関における会計情報の相対的重要性に関する理解を深めるものと考えられる。
キーワード:融資契約、会計情報、ハード情報、ソフト情報、私的情報、公的情報、半構造化インタビュー
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