本稿の目的は、本邦の集約利益情報を用いたマクロ経済指標予測において、条件付保守主義を考慮することが予測精度を高めるかを検証することにある。条件付保守主義とは、会計利益において当該企業に対するグッド・ニュース(経済的利益をもたらすニュース)よりもバッド・ニュース(経済的損失をもたらすニュース)を適時に反映する非対称な適時性を指す。将来のGDP成長率予測における集約利益情報の有用性については先行研究の蓄積がある一方、条件付保守主義を考慮することが予測に与える影響は明らかではない。本稿では、まず、条件付保守主義そのものの定量化を試みた。次に、GDPの自己回帰モデルをベンチマークとし、説明変数に集約利益変化を加えたモデルと集約利益のマイナス変化も追加したモデルの予測力比較を試みた。集約利益のマイナス変化を追加することにより予測誤差が縮小し、条件付保守主義を考慮することが予測精度を高める可能性が示唆された。また、景気後退期には特別損失が情報を適時に反映している可能性も示唆された。
キーワード:マクロ実証会計、会計の利益属性、条件付保守主義
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