ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2025-J-5

光量子コンピューティングの現状と展望

橋本俊和、菅和聖

本稿では、光連続量量子コンピューティングの計算原理と装置を紹介し、研究開発の現状と課題を整理する。光方式は、常温でも量子性が損なわれない光量子を用いて大規模な量子もつれを容易に生成できるため、大規模かつ誤り訂正可能な量子コンピュータを実現するための有力候補である。光方式に要する技術の多くは、既往の光通信技術を転用することで実現されているが、量子誤り訂正や量子優位性の達成に必須となる3次位相ゲート演算の実現をはじめとする多くの未解決の課題が存在する。こうした要素技術にかかる課題は、ハードウェアからソフトウェアまで広範に及ぶうえに、制御回路の開発の中で一体的に解決される必要がある。このため、光方式の開発には、さまざまな強みを持つ研究機関や企業による協力が不可欠である。光方式の実現には課題が多いものの、光による量子状態の伝送および操作の技術は、他の有力な方式の量子コンピューティングや通信の技術とも互恵関係にあるため、粘り強く研究開発を続ける意義は大きいものと考えられる。

キーワード:光量子コンピューティング、測定型量子計算、GKP符号


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