デジタル資産の私法上の性質については、わが国でも議論が展開され始めている。こうした中、米国、UNIDROIT(私法統一国際協会)、英国において、デジタル資産一般に関する立法等の動きがみられている。これらの動きを横断的に眺めてみると、「コントロール(支配)」という概念が重要であることに気付く。従来、わが国において必ずしも十分な議論がなされてこなかった「コントロール」の概念を整理することは、デジタル資産に関する将来的な立法論を議論することのみならず、足許の解釈論を深化させることにも資すると考えられる。他方で、「コントロール」の概念を整理するためには、法律的な議論のみならず、技術的な議論に踏み込む必要があり、多角的な検討が不可欠と言える。そこで本稿では、「コントロール」の概念整理をするうえの取り掛かりとして、「排他性」という概念をキーワードとして整理している。各法域における立法等の動向を眺めると、デジタル資産の利用が拡大する中で、これまでの法規整では十分に対応できなくなっており、将来的にはさらに対応できなくなるだろう、という危機意識に近い問題意識が共通して窺われる。海外の動向にも一層の目配りがなされつつ、今後、わが国におけるデジタル資産に関する法的な議論が活性化していくことが期待される。
キーワード:コントロール、暗号資産、ビットコイン、秘密鍵、UCC、UNIDROIT、英国法律委員会
掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。