ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2024-J-10

消費者物価指数の計測誤差の改善状況と今後の課題―主要国における物価目標の根拠としての視点から―

小林悟、篠原武史、白塚重典、須藤直、竹内維斗文

物価の安定を数値目標で示す場合、主要国の中央銀行では、消費者物価指数が用いられることが多い。この点、1996年の米国ボスキン・レポートを契機として関心が高まった計測誤差の存在は、現在においても、目標物価上昇率を正の値に設定する根拠の1つとして挙げられることがある。本稿では、わが国を含めた主要国における計測誤差についての議論・研究の状況を、同レポート以降に公表されたものを中心に、概観している。これまでの研究蓄積や、各国の指数精度向上の施策や経済構造の変化等を踏まえると、計測誤差の大きさは、地域差や誤差の種類ごとに違いはあるものの、レポートで提起された論点を中心に、全体でみれば縮小したとみられる。もっとも、サービス価格を中心に、引き続き課題が残存する分野があるほか、Eコマース等、新しい経済構造の変化に伴う影響も勘案すると、先行き、経済のサービス化やデジタル化、人口の高齢化が一段と進む中では、計測誤差は、大きく変動する等、解消し得ない可能性がある。これらの点を踏まえると、計測誤差は、消費者物価指数についての数値的な目標を設定する際の根拠の1つとしての妥当性を引き続き有していると考えられる。

キーワード:消費者物価指数、CPI、計測誤差、上方バイアス、品質調整、サービス価格


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2024 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム