ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2024-J-2

バブルの推計:米国の二酸化硫黄排出権市場の場合

遠山祐太、渡辺安虎

本論文では米国の二酸化硫黄(SO2)排出権市場において、排出権価格のバブルが発生したのかを考察する。通常、資産のファンダメンタルバリューとバブルの有無や程度を測定することは困難であるが、SO2排出権についてはSO2排出量の限界削減費用がファンダメンタルバリューであると考えられる。これは各発電所がSO2排出量規制を満たすためには排出権を購入する代わりに、硫黄分の少ない石炭への代替や硫黄分除去装置を設置することにより、追加的な費用で排出量を削減することが可能であるためであり、排出権の価値は発電所の費用最小化問題における排出量制約のシャドープライスとなっているためである。限界削減費用がファンダメンタルバリューであるため、SO2排出権の取引価格と計測された限界削減費用の差がバブルとなり、これを計測する事で、発電所単位でバブルの識別が可能となる。推定の結果、2005年から2006年の期間にかけ、排出権価格は大半の発電所の限界削減費用の推定値を上回っており、バブルが発生していたことが示された。

キーワード:バブル、排出権取引、限界削減費用


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2024 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム