ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2023-J-13

量子コンピュータが暗号に及ぼす影響にどう対処するか:海外における取組み

宇根正志

大規模かつ実用的な量子コンピュータが実現した場合、それを用いて主要な暗号アルゴリズム(公開鍵暗号)を効率的に解読することができるようになるとみられている。このリスクに対処するために、量子コンピュータを用いても解読が困難と評価されている暗号への移行に向けた検討が海外を中心に活発化している。アメリカ政府は、量子コンピュータに対して耐性を有するアルゴリズムとして4つのアルゴリズムを標準化する方針を2022年7月に発表した。また、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、カナダ、オーストラリアのセキュリティ当局は、ITシステムの運営者に対し、量子コンピュータによる暗号解読に関するリスク評価や、アルゴリズム移行などの必要な対応の検討を推奨している。金融分野では、FS-ISACが暗号の移行に関する検討を進めている。金融機関が量子コンピュータによる暗号解読のリスクに適切に対処していくうえで、こうした動向をタイムリーにフォローし、自社での検討に活かしていくことが重要であろう。

キーワード:暗号アルゴリズム、公開鍵暗号、リスク評価、量子コンピュータ


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