ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2023-J-7

BERTと因果抽出を用いた気候変動ナラティブの可視化・指数化

金田規靖、坂地泰紀

本研究では、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)と因果抽出という二つの自然言語処理手法を用いて、気候変動に関する新聞記事をテキスト分析することにより、「気候変動ナラティブ」(本稿では気候変動に関する原因事象と結果事象のつながりに関するストーリー)を抽出し、可視化・指数化する手法を提案する。テキストの書き手が想定する因果関係に注目して、情報抽出・定量化を行った点に手法上の新規性がある。抽出された気候変動ナラティブを時系列でみると、2018年以降、気候変動に関する議論の進展や気候変動に関連する政策の実施が企業行動やマクロ経済・物価動向に与える影響に注目したナラティブが増えていることが判明した。また、最近では、気候変動関連政策と金融政策のつながりに注目したナラティブが出現していることも確認された。さらに、気候変動に関連するとみられる自然災害(水害等)が経済活動に与える悪影響に関する認識が強まっており、企業や当局にとっての新たな課題として受け止められている可能性が示された。本研究の手法は、様々な経済トピック間の因果関係を分析可能であることから、幅広い分野への応用が期待される。

キーワード:気候変動、自然言語処理、ナラティブ分析、BERT


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