ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2022-J-7

機械学習による予測・推論の公平性:金融サービスにおいて求められる配慮とは

宇根正志

本稿では、機械学習の予測・推論を融資判定のサービスに利用するケースを例に、予測・推論の偏りが融資判定の公平性に及ぼしうる影響(典型的には人種データの扱いに伴う問題)、技術的な対応方法、残されている課題を解説する。まず、融資判定の文脈での公平性に関するサービス要件を、原則・社会規範、サービス利用者などの期待に基づいて決定する方法を示す。次に、決定したサービス要件を前提に、公平性に配慮した機械学習利用システムの開発・運用方法や予測・推論の偏りを軽減する各種手法を、機械学習品質マネジメントガイドラインを参照しつつ解説する。最後に、技術的対応だけでは解決が難しい問題として、公平性に関するサービス要件の設定やそれを具体化する概念の選択に焦点を当て、サービス利用者との対話を通じて公平性のサービス要件を抽出する手法の研究など、最新の研究成果の概要と課題を解説する。

キーワード:ガバナンス・ガイドライン、機械学習、機械学習品質マネジメントガイドライン、公平性、融資判定


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