ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2022-J-4

信用スコアに関する規律のあり方:わが国と米国における信用情報の取扱いを踏まえて

林眞子

スマートフォン・アプリ等を通じて収集した多様な情報をもとに、消費者の信用力を数値化したスコアを、与信等の判断に利用するサービスが登場している。こうした信用スコアの適切な利用は、消費者に対し与信の機会を増やす可能性がある一方で、不適切な利用は消費者に経済的・社会的不利益を与えかねない。本稿では、わが国の信用スコアに関するサービスの発展を展望し、信用スコアを算出・提供する事業者が情報を適切に取り扱うために必要な規律を検討した。
取り扱う情報の内容等が類似するわが国および米国の信用情報機関に対する規制の内容をもとに検討を行った結果、情報の利用にあたっての消費者からの同意取得に加え、情報の特性や利用目的に合わせた追加的な規範の重要性を指摘した。情報の提供先における信用スコアの利用状況の確認義務や、信用スコアの透明性を高めるための開示義務が挙げられる。さらに、信用スコアを巡る米国の議論も踏まえると、データの正確性確保、差別的影響の防止に必要な措置を講じることが求められる。
イノベーションの進展状況に合わせ、情報の適切な取扱いを機動的に確保する観点から、こうした規律については、まずは事業者の自律的な取組みとして実践されるべきである。その上で、サービスが社会に普及した場合には、義務の内容を明確にする観点から、信用スコアを含む信用情報の収集・第三者提供という機能に応じた規制の立法も検討に値する。

キーワード:信用スコア、スコアリング、信用情報機関、信用情報、個人情報保護法、貸金業法、公正信用報告法


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2022 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム