ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2021-J-11

CO2排出量と企業パフォーマンス:Double Machine Learningを用いた日本の実証研究

有賀涼、五島圭一、千葉貴司

本研究では、2011年度から2019年度においてCO2排出量が取得可能な東証一部上場企業を対象に、CO2排出量と企業パフォーマンスの関係について、長期パフォーマンス、短期パフォーマンスおよび資本コストの側面から実証分析を通じて評価を行った。その際、先行研究で用いられている手法の潜在的なバイアスに対処するため、Chernozhukov et al.[2018]が提案するDouble Machine Learningを採用したセミパラメトリック・モデルによる分析を行った。分析の結果、CO2排出量の少ない企業ほど(1)長期的な企業パフォーマンスが良好となること、(2)株主資本コストが低くなること、が確認された。これは、CO2排出量の少ない企業に対して投資家が将来の経営リスクを低く見積もり、リスク・プレミアムを低めに設定することで、当該企業の市場価値が高くなることを映じた結果と解釈できる。また、CO2排出量の少ない企業ほど短期的なパフォーマンスが高いことや、負債コストが低いことも示唆されたが、それと同時に、これらの関係性について、先行研究の多くで用いられている推計手法の結果はバイアスを含む可能性があり、その評価に注意が必要であることも示された。

キーワード:CO2排出量、企業パフォーマンス、Double Machine Learning


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