ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2021-J-7

暗号資産の保有に係る会計上の取扱いに関する考察―会計マネー・ツリーを用いたアプローチから―

豊蔵力

本稿では、暗号資産の保有に係る会計上の取扱いに関して、デジタルマネーを分類する独自の枠組み(会計マネー・ツリー)を用いたアプローチからの考察を試みる。具体的には、Adrian and Mancini-Griffoli [2019] が示した支払手段の分類に関する枠組み(マネー・ツリー)の分析視角を出発点に、会計的な視点からデジタルマネーの経済実態を捉えるための6要素に基づき支払手段を分類する独自の枠組み(会計マネー・ツリー)を提示する。この枠組みを用いて、キャッシュフローの態様に重要な影響を及ぼす4要素からみると、暗号資産をはじめとするデジタルマネーの保有に係る会計上の取扱いに固有の難しさはないと考えられることを明らかにする。同時に、デジタルマネーが現金それ自体として扱われ得るかどうかを識別する2要素からみた場合、法定通貨と異なる表示単位を用いるデジタルマネーの使用が拡がると、外貨との境界が曖昧化し、そもそも現行の会計基準における外貨の扱いが適切なのかなどの課題を投げかけることになると指摘する。最後に、暗号資産の会計マネー・ツリー上の分類(暗号資産の経済実態)と保有目的を踏まえた会計上の取扱いについて検討したうえで、現行の国際財務報告基準(IFRS)に基づく取扱いとの差異を示している。

キーワード:暗号資産、外貨、会計、国際財務報告基準(IFRS)、デジタルマネーの分類


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