ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2020-J-7

銀行監督行政の手続法構造

山本隆司

銀行監督法は、金融システムのリスクに関する知識の蓄積と情報の収集を包括的・継続的に行うことを目的とする。銀行監督法を手続法として見た場合の特徴は、次の点にある。第1に、銀行がそれぞれリスクを評価および管理する組織・手続を、組織の中枢において整備することが、国により監督される。国の監督は、原則・コンセプトの提示等により、銀行と対話的に協働して行うことが求められる。第2に、各国の専門機関から構成されるバーゼル銀行監督委員会が、情報・知識を結集して実務の統一を図るために策定する標準が、事実上の強い通用力をもつ。最低限の自己資本要件を超える規律については、委員会が詳細にわたる標準を定めず、各国における基準・手続を比較するピアレヴュー等により、国ごとの事情を考慮し漸次的に基準の形成を図ることがある。第3に、EUの金融監督システムおよび単一監督機構においては、加盟国当局と欧州銀行監督庁およびユーロ参加加盟国当局と欧州中央銀行との間で、権限の複雑な重なり合いが見られる。そこでは、段階的な権限行使、情報・意見の交換、ベストプラクティスの形成が、広範に法制度化されている。今後は、民主的正統性、決定過程の透明性、関係する諸利益が表出・考慮される機会、そして関与する専門家の多様性を、どのように確保していくかが、銀行監督法の課題となる。

キーワード:銀行監督、リスク、行政手続、公私協働、行政法の国際化、バーゼル銀行監督委員会、欧州中央銀行


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