ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2019-J-2

1940年代の家計消費の補間

小池良司

本稿は、1940年代の家計支出額について、当時の家計調査や闇取引などの情報を含む歴史資料を用い、戦時の欠損期を補間しつつ、比較可能な形に整理した。まず、家計支出額の名目値を都市家計・農家家計別に補間・整理したうえで、闇価格・闇ウエイトを勘案した実効物価を用いて実質値を試算した。今回試算した都市家計の1945年の実質値は、1940年比3割の水準まで悪化した。農家家計の実質値は、1943~46年に同6~7割の水準で停滞した。次に、都市家計と農家家計の支出額を人口比で加重平均した今回試算値を、既存統計の1人当たり家計消費額と比べた。実質値では、今回試算値は1944年には1940年比5割強の水準まで低下し、既存統計(同7割水準)を下回った。既存統計に無い1945年値は、今回試算で1940年比5割弱の水準となった。別の資料に基づく代替的な想定を考えても、1945年値は同5割強の水準まで低下した。これらの値と、1874(明治7)年まで遡った1人当たり実質消費額を比較すると、1945年の家計消費は太平洋戦争により明治前期である1875~80年並みの水準まで低下したと考えられる。

キーワード:家計調査、闇価格、実効物価、現物支出、太平洋戦争


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2019 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム