ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2018-J-19

ビッグデータと人工知能を用いたファイナンス研究の潮流

和泉潔

近年、多くの分野においてビッグデータと人工知能技術の応用が進んでおり、ファイナンス分野もその例外ではない。本稿では、その最新事例を概括し、今後のさらなる発展の方向性や克服すべき課題について議論を行う。最初に、これまで定量分析が困難であった画像やテキストといった非構造化データおよび大規模データについて、機械学習を用いて分析し、金融実務や市場分析に取り入れた最新事例を紹介する。次に、ファイナンス分野への人工知能応用の課題として、問題設定能力・推定過程の透明性・他者の反応の推定の3点について論じる。最後に、これらの課題を克服するための手法の1つとして、複数のプログラム同士を人工市場において対戦させる、自己対戦型の学習を紹介する。ファイナンス分野で利用されている人工知能技術には、大きな期待が寄せられているものの、同技術は万能ではなく、現時点では、あくまで人間の能力を拡張するツールに過ぎない。今後は、特定の状況において有効な個々の人工知能技術を複数組み合わせることで、複雑な状況にも対応できるよう高度化を進めることが望まれる。

キーワード:ビッグデータ、人工知能、テキストマイニング、機械学習、金融市場分析


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