ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2018-J-17

第二次世界大戦中の日本における闇価格の形成について―ヘドニック・アプローチに基づく推計―

鎮目雅人

本稿では、第二次世界大戦中ならびに同戦後の財価格の変動を継続的に捉えるための試みとして、いくつかの財について、既存の戦後闇価格データに接続可能な戦時中の闇価格に関する時系列データを新たに作成する。具体的には、5品目の財(米、甘藷、馬鈴薯、鶏卵、砂糖)について、価格算出にあたり品質調整を行う手法であるヘドニック・アプローチを用いて、取引当事者の属性や取引場所などの違いが価格に与える影響を調整することにより、できるだけ偏りの少ない闇価格データを推計する。その結果をみると、各財の闇価格は大戦中から上昇が加速し、大戦末期には四半期ベースの前期比換算で+40%から+80%の高い上昇率を記録したこと、戦時体制に入る前の1934年時点の水準との比較では、終戦前後にはすでに50倍(甘藷)~800倍(砂糖)以上にまで上昇しており、戦時中の方が戦後の上昇幅より大きいこと、品目によって上昇時期にばらつきがあり、米や砂糖は大戦中、いも類や鶏卵は終戦直後が上昇率のピークであったこと、農村部との比較では、都市部の方が闇価格の水準は概ね高めであったこと、等が分かる。

キーワード:価格形成、闇市場、第二次世界大戦、ヘドニック・アプローチ、経済統制


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