ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2017-J-13

フォワード・ガイダンスの有効性の再検討:日本からの教訓

マーク・ガートラー

2013年春に、日本銀行はインフレ目標の導入とフォワード・ガイダンスの積極的な利用を含む最先端の金融政策を導入した。既存のマクロ経済理論の予測とは対照的に、これらの政策は、経済のリフレーションに極めて限定的な成果しかあげられていない。日本の経験と既存の理論の間の断絶は、フォワード・ガイダンス・パズルと共通した問題であることを論じる。最近の研究が示唆するように、フォワード・ガイダンス・パズルの本質は、既存のモデルが、先行きの金利予想の変化に対して実体経済が信じがたいほどに強く影響を受け、またその効果は金利変化の予想期間が長期になるほど大きくなることにある。そこで、この講演では日本におけるリフレーションへの挑戦を描写することを企図したモデルの概略を示す。最近の既存研究と同様、合理的期待形成の仮定から離れることによって、フォワード・ガイダンスの効果を弱めることを試みる。大きな特徴として、適合的・合理的の両者を組み合わせた期待形成メカニズムを導入する。日本の経験に最も関連するのは、各経済主体がトレンド・インフレ率について適合的な期待を形成するとしていることであり、この点は実証結果とも整合的である。黒田[2016]が強調しているように、インフレ率が目標水準にアンカーされた歴史に乏しい経済では、経済主体は中央銀行がインフレ率を目標水準へ誘導できるという事実そのものを必要とする。

キーワード:フォワード・ガイダンス、インフレ目標、適合的・合理的の両者を組み合わせた期待形成


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