ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2014-J-17

ドイツにおける顧客財産保護にかかる法制度
――有価証券寄託法を中心として

加毛明

2008年の金融危機を契機として、金融機関が破たんした場合に、当該金融機関が顧客から預かっていた資産をどのように取り扱うべきかが、国際的な議論の俎上に載せられている。そのような背景のもとで、本稿はドイツの「有価証券の保管および買入れに関する1937年2月4日の法律(Gesetz über die Verwahrung und Anschaffung von Wertpapieren vom 4. Februar 1937)」(寄託法)を検討対象として取り上げる。寄託法は、有価証券取引における顧客財産保護を目的として、「第3章 倒産手続における優先的地位」において32条と33条という2つの規定を設ける。32条は、有価証券の所有権・共有権を有しない顧客に対して倒産手続上の優先権を付与する規定である。33条は、金融機関に有価証券の質入れを授権し、当該授権に基づいて有価証券が質入れされた顧客を清算手続に参加させることで、これらの顧客間における損失の平等な負担を実現することを目的とする。これらの規定はともに、金融機関の倒産手続において一定の財産から構成される特別財団から顧客が倒産債権者に先立って弁済を受けることを認めるものである。
本稿は、寄託法の規定に関する解釈上の問題や特別財団の分配の基準・手続を検討することを通じてドイツにおける顧客財産保護制度の理解を深めることを目的とする。そしてわが国における立法論への示唆と、顧客財産保護に関する比較法研究の視座を獲得することを目指す。

キーワード:顧客資産の保護、倒産法、有価証券法、ドイツ法、比較法


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