ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2014-J-11

独禁法と事業法の緊張関係のもとでの判断事例に関する考察
−銀行合併へのインプリケーション−

江川絵理

自由な競争の促進を目的とする独占禁止法と、政策目的達成のため競争に一定の制限を加える事業法は緊張関係にある。しかし、近年、事業法上の規制や事業所管官庁の運用は競争促進的となっており、公正取引委員会は企業結合の審査等に際し、こうした事業所管官庁の判断を重視する方向に変化している。このような傾向は銀行合併にも当てはまっており、公正取引委員会は競争環境の激化を積極的に評価して、合併による競争上の弊害の有無を判断している。ただし、先般の金融危機を経て、国際的に金融規制の強化の動きが進む中で、仮にわが国の金融規制が強化されることとなれば、競争の促進が事業法上必ずしも確保されなくなる。こうした中で、今後、金融システムの安定の観点から金融再編を通じた金融機関の経営基盤の強化が図られていく際には、産業競争力強化法に倣い、当局間の連携手続きを法的に担保する枠組みを導入することが有益と考えられる。

キーワード:独占禁止法、事業法、事業法考慮説、規制緩和、金融自由化、銀行合併、産業競争力強化法


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