ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2012-J-8

金融危機、金融市場、金融仲介機能に関する研究の潮流
−危機がもたらした視点・力点の変化の整理−

大橋和彦、服部正純

 1970年代初に上場金融デリバティブや証券化金融商品が登場した金融市場は、その後数十年にわたりイノベーションと競争を通じて大発展を遂げた。2000年代に入ってからは、組成・販売ビジネスの興隆、シャドー・バンキング・システムの拡大を経験してきたが、2008年に深刻な危機に陥った。今次金融危機は、金融市場に関する我々の理解の不足を明らかにし、それまで軽視されてきた諸問題の重要性を再認識させている。本稿は、危機を契機に生じたこのような視点の変化を整理し、これまでに得られた重要な知見の幾つかを取り上げて概観する。そのために、まず、金融危機前の金融市場の拡大を支えた、市場の機能と動態に関する理解の基本的前提について考察する。そして、今次金融危機の特徴的な現象に係わる個別の事項として、組成販売ビジネスにおける情報生産のインセンティブ、格付け機関のインセンティブと格付けの信頼性、金融機関のレバレッジの振幅、流動性の枯渇、遅行性資本移動(slow-moving capital)、不確実性のもとでの市場参加者の行動と行動経済学の視点からの金融危機の解釈という6つの論点を紹介する。

キーワード:金融危機、金融市場、金融仲介機能


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2012 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム