ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2010-J-16

マルコフ関数モデルによる金利オプションの価格付けの実用化

太田晴康

 本稿では、マルコフ関数モデル(Markov-functional model)を用いた金利オプション価格の算出について、新たな実装方法を提案する。Hunt, Kennedy, and Pelsser[2000]で導入されたマルコフ関数モデルは、状態変数を低次元のマルコフ過程とし、オプション価格の評価に必要な割引債と基準財の価格をその状態変数の関数としてモデル化する。この関数形は自由度が高く、金利オプションの市場価格にボラティリティ・スマイルが存在する場合でも柔軟にフィッティングが可能である。また、低次元のマルコフ過程を状態変数とするため、早期行使権付きの取引を含め、広い範囲の金利オプションについて、効率的な価格計算が可能となる。本稿では、マルコフ関数モデルを実用化するうえで、離散的な権利行使レートにおいてのみ市場価格が観察される金利オプションに対して、安定的なフィッティングを実現する関数の構成方法を提案する。計算例としては、キャプレットやヨーロピアン・スワップションの市場価格を所与として、バミューダン・スワップションの価格付けを行った結果等を示す。

キーワード:マルコフ関数モデル、金利オプション、ボラティリティ・スマイル、バミューダン・スワップション


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