ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2009-J-9

早期行使条項付き派生証券のプライシングの効率化 -楠岡近似と積分曲線上の有限差分法-

藤原武弘

 転換社債や優先株のように早期行使条項が内包された派生証券が数多く取引されている。こうした派生証券の価格は偏微分方程式の解として導出され、その数値計算法として有限差分法が広く用いられている。もっとも、派生商品のペイオフや原資産価格の確率過程によっては偏微分方程式が複雑になり、計算コストの著しい増大を招きやすいという問題点を抱えている。本稿では、その解決法として以下の方法を提案する。
 (1) 楠岡近似を用いて、偏微分方程式の生成作用素が単一のベクトル場で表現されるよう問題を分割する。
 (2) 単純化された問題について、対応するベクトル場の積分曲線に着目することで、1次元熱移流拡散方程式の問題に帰着させる。
 (3) 移流項を含まない1次元熱拡散方程式については、固有値分解を用いた有限差分法により効率的に計算を行う。
 (4) 移流項の考慮や作用素の再結合で必要となる格子点上の値は、スプライン補間で求めることにより、近似的な作用素を構成する。
 さらに、上記の手法をヘストン・モデルにおけるヨーロピアン・プット・オプションのプライシングに適用し、その計算効率性を確認する。

キーワード:楠岡近似、有限差分法、ヘストン・モデル、早期行使条項付き派生証券


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