ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2006-J-14

戦前期日本銀行の取引先政策

岡崎哲二

 日本銀行(日銀)は戦前以来、「銀行の銀行」として、多くの民間銀行と取引関係を結んできた。しかし、全ての民間銀行が日銀と取引関係を持っていたわけではない。この点に着目して、本論文では、1920年代後半~30年代前半の普通銀行における日銀との取引関係の分布を把握するとともに、日銀による取引先銀行の選択基準について、日銀アーカイブが所蔵する対民間銀行取引の開始と廃止に関する稟議書類の分析、および『日本銀行沿革史』から構築したデータ・ベースに基づく計量分析を通じて検討した。
 取引開廃に関する稟議書類から、この時期に、日銀は、(1)銀行財務の健全性(収益性、流動性、資産内容等)、(2)役員・大株主構成とその個人資産の内容、(3)銀行規模と地域金融市場における地位、(4)日銀取引以外の代替的な資金調達手段の有無、を考慮していたことが明らかになった。(1)、(3)、(4)は計量分析の結果と整合的である。すなわち、日銀と取引関係を持っているという状態を示す変数、取引開始を示す変数、および退出以外の理由による取引廃止を示す変数の3つを被説明変数とした回帰分析を行った結果、資産規模が大きい銀行、府県内における資産規模順位が高い銀行、収益性が高い銀行、そして大都市部以外の地域の銀行ほど、日銀との取引関係を持つ確率と取引開始確率が高く、取引廃止確率が低い、ことが明らかになった。

キーワード:中央銀行、金融政策、金融システム、銀行


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