ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2006-J-12

ウェーブレット分散を用いた金融時系列の長期記憶性の分析

稲田将一

 本稿では、ある時系列が長期記憶性を有するかどうかを分析する手法を検討する。長期記憶性の有無を調べる方法の1つとして、スペクトル密度を用いる方法が知られているが、推定精度は高くないという問題がある。そこで、スペクトル密度に代えてウェーブレット分散を用いて長期記憶性の有無を調べる手法を示す。ウェーブレット分散を用いると、推定精度が向上する。実証分析として、株価(TOPIX)の日次収益率の長期時系列にウェーブレット分散を用いると、1970年代には長期記憶性が認められたものの、1980年代以降では長期記憶性が認められなかった。また、円/ドルレートの日次変化率では、一貫して明確な長期記憶性は認められなかった。

キーワード:長期記憶性、ウェーブレット分散、スペクトル密度、フラクショナル ・インテグレーション過程


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2006 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム