金融政策の分析に用いる前向きのモデル(forward-looking models)においては、 完全条件付最適のための条件は時間を通して不変ではなく、その結果、中央銀行に毎期それ以前に最適化したプランから離れるインセンティブが生じる。条件付コミットメントのプランには、それゆえ、戦略的矛盾がある。裁量的最適化はこの問題はないが、より低いパフォーマンスを示す。ウッドフォードによって提唱された「タイムレス・パースペクティブ(timeless perspective)」に基づく政策ルールは、コミットメントのプランにある戦略的矛盾と、信認の欠如という問題を克服することを意図したものであり、一方で裁量的最適化より高いパフォーマンスを示すので、大変注目を集めている。第4の「完全にタイムレス(fully timeless)」な代替案は、タイムレス・パースペクティブの政策ルールと少しだけ違っている。それは無条件のパースペクティブからみると明白に優れているが、条件付のパースペクティブからみると優越しいるわけではない。本稿は、これらの比較をやや詳細に議論し、これらの政策運営方式の持続可能性について手短に考察する。
キーワード:政策ルール、動学的不整合性、タイムレス・パースペクテイブ
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