ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2005-J-2

生体認証システムの脆弱性について
―身体的特徴の偽造に関する脆弱性を中心に―

宇根正志、松本勉

 生体認証技術は、指紋や虹彩等の個人特有の生体情報を利用して個人を自動的に認証する技術であり、パスポートをはじめとして幅広い分野において採用されつつある。金融分野においても、銀行窓口やATMでの取引における顧客の本人確認の手段として生体認証技術の導入に踏み切る動きが一部の銀行においてみられている。
生体認証技術の活用の裾野が広がる中で、同技術を実現するシステム(生体認証システム)のセキュリティの確保・維持が一層大きな課題となっている。特に、市販の指紋照合装置や虹彩照合装置の一部において、物理的に偽造された生体情報を誤って受け入れてしまうという脆弱性が存在することを示唆する研究成果が発表されていることから、こうした脆弱性の評価や対策に関する十分な検討が必要となってきている。また、生体認証システムを長期的に運用していく際には、現時点で顕現化していない未知の脆弱性が将来顕現化することも想定し、そうしたケースに適切かつ迅速に対応するための体制整備についても検討しておくことが求められる。
本稿では、生体認証システムの脆弱性に焦点を当てて、身体的特徴の偽造の脆弱性に関する代表的な研究事例を紹介するとともに、そうした脆弱性に対応するためにどのような検討が必要かに関して考察を行う。

キーワード:生体認証技術、脆弱性、セキュリティ


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

Copyright © 2005 Bank of Japan All Rights Reserved. 注意事項

ホーム