江戸時代の1両は今のいくら? ―昔のお金の現在価値―

江戸時代の1両は今のいくら?

答え:簡単には言えません。

左から慶長、元禄、宝永、享保、元文、万延の各小判。これ以外に、正徳、文政、天保、安政小判も発行された。

Q

何故?

A

江戸時代における貨幣の価値がいくらに当たるかという問題は、大変難しい問題です。世の中の仕組みや人々の暮らしが現在とは全く異なり、現在と同じ名称の商品やサービスが江戸時代に存在していたとしても、その内容や人々がそれを必要とする度合いに違いがみられるからです。
また、江戸時代は約260年と長期にわたることや、金貨・銀貨・銭貨からなる貨幣制度(三貨制度)などいろいろと考えなければいけないことがあります。

Q

目安として知る方法はありますか?

A

目安として知る方法に、当時のモノの値段を現在と比べてみる方法があります。

お米で換算すると…

江戸時代のお米の値段 米1石(約150kg) = 1両とすると… (18世紀)

現在のお米5kg = (お店で調べてみましょう)

150kgの値段は…?

5kgの米の値段 (a) ÷ 5 × 150kg = (A)

1両はおよそ (A) ということになります。

大工の賃金で換算すると…

江戸時代に1両で1日23人の大工が雇えたという事例があります。(18世紀後半)

現在の大工の賃金 =

大工の賃金 (b) × 23人分 = (B)

1両はおよそ (B) ということになります。

そばの代金で換算すると…

江戸時代のそばの値段1杯16文とすると… (江戸中~後期)
仮に江戸後期の公定相場1両 = 銭6,500文で計算すると、1両で6,500文 ÷ 16文 = 約406杯のそばが食べられたことになります。

現在のそば屋のそばの値段 = (調べてみましょう。色々なおそば屋さんがありますね。)

そばの値段 (c) × 406杯 = (C)

1両はおよそ (C) ということになります。

(A) (B) (C)異なる答えが出たのではないでしょうか?
目安として比べるモノによって、1両が今いくらになるか大きく異なります。また、同じモノであっても、その値段は江戸時代の時期によって異なるため、計算する1両の価値も異なってきます。このように、江戸時代の1両が今いくらであるかは、簡単に言えることではなく、非常に難しい問題です。

江戸時代の1両の価値を考える上で…

江戸時代の1両の現在の価値を考える上で、考えなければならないことが色々あります。

例えば…

社会や経済の仕組みの違い

江戸時代の人々にとって滅多に手に入らずに貴重であったモノが、現在も同じように貴重であるとは限りません。
同じ機能を果たすモノであっても、当時と現在とでは材料や生産方法が異なり、江戸時代には貴重で高価であっても、現在は手軽に安価で買える、ということもあります。
例えば、江戸時代に使われた傘は、ある事例では1本250文ですが、竹や和紙などを材料とし、すべての工程が手作業で作られました。一方、現在の洋傘は、スチール、アルミ、化学繊維の布などの材料の生産工程が機械化され、量産が可能になっています。
このように同じモノであっても、江戸時代と現在とでは生産方法や入手の容易さが異なるなど、値段を単純に比較すると誤解を招きやすい面があり、注意する必要があります。

約260年におよぶ江戸時代

江戸時代、約260年の間には、農業をはじめ諸産業が発達し、商品の流通もさかんになり、人々の生活も変化しました。そうしたことから、各時期でモノの値段は大きく異なりました。また、幕末の開港後には、輸出の増大などでモノの値段は1年のあいだでも大幅に上昇しました。

作柄、地域差

農産物などの値段は、江戸時代には豊作・不作など天候による影響を大きく受けました。また、地域差や季節変動も、消費者の手に渡るまでの輸送技術や冷蔵技術などが進歩した現在とは大きく異なります。

三貨制度

江戸時代は金・銀・銅(銭)の貨幣が使われ(三貨制度)、それぞれの交換レートとして幕府による公定相場がありましたが、実際には毎日変動しました。仮に、そば1杯16文としても、1両が何文であるかによって、1両でそばを何杯食べられるかは変わってくるため、そばで換算する1両の現在価値も異なってきます。

「小判1枚( = 1両)」に含まれる金の価値を現在の価格に換算すると?

コラム

江戸時代は260年の間に、金の品位(含まれる金の割合)が異なる10種類の小判が発行され、小判1枚に含まれる金の量が年代によって異なっていました。
小判は計数貨幣で、小判に含まれる金の量で価値が決められていたわけではありませんが、仮に、現在の金の価格で小判1枚に含まれる金の価値を計算してみるとどうなるでしょうか。

調べてみよう

金1gの現在の価格 = (新聞などで調べてみましょう)

慶長小判 (重さ17.9g、品位86%) の金の含有量約15g × (a) =

元禄小判 (重さ17.9g、品位57%) の金の含有量約10g × (a) =

天保小判 (重さ11.3g、品位57%) の金の含有量約6g × (a) =

万延小判 (重さ3.3g、品位57%) の金の含有量約2g × (a) =

※仮に金1g4,500円とすると、慶長小判には約15gの金が含まれ67,500円、天保小判の金は約6gで27,000円となります。

江戸時代に1両で買えたもの (19世紀前半武蔵国の例)

団子 1,625本 (1本4文、4ツ刺し)

今の団子の値段 1本 =

(a)円 × 1,625本 = (A)

団子で換算した時の1両の値段

饅頭 約2,170個 (1個3文)

今の饅頭の値段 1個 =

(b)円 × 2,170個 = (B)

饅頭で換算した時の1両の値段

豆腐 約270丁 (1丁24文)

今の豆腐の値段 1丁 =

(c)円 × 270丁 = (C)

豆腐で換算した時の1両の値段

約930個 (1個7文)

今の卵の値段 1個 =

(d)円 × 930個 = (D)

卵で換算した時の1両の値段

油揚げ 約1,625枚 (1枚4文)

今の油揚げの値段 1枚 =

(e)円 × 1,625枚 = (E)

油揚げで換算した時の1両の値段

約26本 (1本250文)

今の傘の値段 1本 =

(f)円 × 26本 = (F)

傘で換算した時の1両の値段

(1両 = 6,500文で仮に換算。時期、場所等によって異なりますので一例としてご覧ください。)

江戸時代のモノの値段 (19世紀前半の一例)

長いも1本108文
椎茸10個45文
ゆず1個16文
こんにゃく1丁8文
醤油1升83文
うり1つ8文
熊手1本35文
草履1足12文
髪結16文

蓮根1本78文
鰹節1本124文
1個6文
1升200文
1升124文
ろうそく60本100文
1本250文
日傘1本188文

※ここで挙げた事例は、それぞれある時点・ある場所での、個々の事例を目安として示したものです。時期・場所等により、各値段は異なります。また、ここで挙げたような個数・量も判明する事例を同じ史料から拾うのは困難なため、いくつかの異なる史料から掲げています(関東農村19世紀前半)。あくまで目安としてご覧ください。

近世以前の物価に関する主な参考文献

近世の物価

  • 三井文庫編『近世後期における主要物価の動態[増補改訂]』東京大学出版会(1989年)
  • 大石慎三郎「<資料紹介>天保13年8月”銭相場公定に伴う物価引き下げ令”による「物価書上」について」(学習院大学経済論集4号、1966年)
  • 岩橋勝『近世日本物価史の研究』大原新生社(1976年)
  • 新保博『近世の物価と経済発展』東洋経済新報社(1978年)
  • 小野武雄『江戸物価事典』展望社(1979年)
  • 山崎隆三『近世物価史研究』塙書房(1983年)
  • 原田敏丸・宮本又郎『シンポジウム・歴史のなかの物価』同文館出版(1985年)
  • 土肥鑑高『近世物価政策の展開』雄山閣出版(1987年)
  • 草野正裕『近世の市場経済と地域差―物価史からの接近―』京都大学学術出版会(1996年)
  • 小柳津信郎『近世賃金物価史資料』成工社出版部(1998年)

※個別の物価の事例については、各自治体などから出版されている史料集などからも調べることができます。

古代・中世の物価

  • 古代・中世都市生活史(物価)データベース
    国立歴史民俗博物館ホームページの「データベース」〈2022年6月現在〉
  • 京都大学物価史研究会『15~17世紀における物価変動の研究』読史会(1962年)
  • 桜井英治編『古代・中世の都市をめぐる流通と消費』(『国立歴史民俗博物館研究報告』92集、2002年)
  • 桜井英治編『古代・中世における流通・消費とその場』(『国立歴史民俗博物館研究報告』113集、2004年)

※既に絶版になっている図書もありますので、大きな図書館などで閲覧してください。
※上記には主な図書のみ掲げ、雑誌掲載論文については割愛しました。