金融研究 第1号 (1979年1月発行)

マネーサプライおよび財政支出と名目GNPの関係について
−日本経済におけるマネタリスト仮説の検証−

折谷 吉治

 本稿の狙いは、マネーサプライおよび財政支出と名目GNPとの間の関係に関するマネタリストの仮説を、日本経済について検証してみることにある。ここで取り上げるマネタリストの仮説は次の3点である。
 1.達観してみればマネーサプライと名目GNPとの間には、前者から後者への一方方向の因果関係が存在する。
 2.マネーサプライの名目GNPに及ぼす効果は大きく、かつ永続的である。
 3.一方、財政支出の名目GNPに及ぼす効果は、マネーサプライのsupportiveな変動をともなわないかぎり、最終的にはごく小さい("crowding-out"が発生する)。
 検証の統計的手法としては、従来の手法(時差相関係数の計測、Almon lagの使用等)に比べて優れているとして近年欧米で広く用いられている手法(Sims test及びShiller lag)を用いた。
 こうした検証方法によるかぎり、マネタリストの上記3仮説はわが国でも棄却できないとの結論を得た。本稿ではこうした仮説の背後にあるメカニズムは詰めていないし、マネタリスト理論一般に対する批判に反論しようとしているわけでもないが、少なくとも「米国でマネタリストが論拠としている事実はわが国でも存在する」という点が明らかとなった。
 なお、財政支出と名目GNPとの間の因果関係についてもみてみたが、マネーサプライと名目GNPとの間にみられるような、一方方向の因果関係は検出しえなかった。
 以下では、まずマネーサプライおよび財政支出と名目GNPとの間の因果の方向をSims testを用いて検証したあと、いわゆる総支出関数をShiller lagを用いて計測し、マネーサプライおよび財政支出が名目GNPに及ぼす効果を検証することとする。


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