金融研究 第8巻第1号 (1989年3月発行)

藩札の果たした役割と問題点

檜垣 紀雄

 本論文は、日本銀行金融研究所が1983年以降実施してきた各地藩札の流通実態に関する委託研究の研究成果を暫定的に取りまとめたものである。藩札とは、諸藩が領内における流動性の供給と正貨(金銀銭貨からなる幕府鋳造貨幣)の藩庫への吸収を主たる目的として発行した地方貨幣のことをいう。
 本論文の内容は、概略以下のとおりである。
(1) 藩札は江戸時代中期以降、西日本所在の各藩を中心として、正貨兌換・領内限定通用を原則として発行されたが、幕府貨幣が不足していたこともあって決済手段として広く領民に受容された。
(2) しかし、天変地異に伴う凶作などにより藩財政が次第に逼迫していったこともあって、財政補填のために藩札が濫発される傾向が強くなり、取り付け騒動(藩札の正貨との引き換え運動)も生じるに至った。
(3) このように藩札の場合、財政当局と通貨管理当局が「藩」という同一主体であったために、安直な財政補填策に利用され、濫発されるケースが多かったが、明治初年、幣制統一の一環として新政府によってすべて償還され、史上から姿を消すに至った。


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