金融研究 第38巻第2号 (2019年4月発行)

投資判断におけるアルゴリズム・AIの利用と法的責任

アルゴリズム・AIの利用を巡る法律問題研究会

本稿は、日本銀行金融研究所が設置した「アルゴリズム・AIの利用を巡る法律問題研究会」(メンバー〈50音順、敬称略〉:有吉尚哉、井上聡、加藤貴仁、加毛明、神作裕之、神田秀樹〈座長〉、佐伯仁志、道垣内弘人、森下哲朗、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。
これまで、情報技術の発展は、金融分野の業務執行のあり方を変容させてきた。近年では、コンピュータの処理性能の向上や利用可能なデータの拡大等を背景に、機械学習や人工知能(artificial intelligence: AI)に関する技術が大きく進展しており、こうした技術は、金融分野においても利用されはじめている。
こうした先進的な技術が金融分野において利用されうる例の1つに、投資判断におけるアルゴリズム・AIの利用が挙げられる。このとき、個別の投資判断の時点において、人間の判断が介在しないことがあるほか、投資判断についての予測可能性や説明可能性が低下する可能性がある。その場合、アルゴリズム・AIを利用した取引により、投資家に損失が生じたり、市場の公正性を害する取引が行われたりすると、誰がどのような責任を負うかが不明確となる事態も考えられる。
以上のような問題意識を踏まえ、本報告書では、アルゴリズム・AIによる投資判断を提供する業者がいる場面において、金融商品取引法上の規制対象となる主体が誰であるか、また、投資家に損失が生じた場合における損失分担をどう判断すべきかについて検討するとともに、アルゴリズム・AIを利用して自動で取引を行う場合一般における不公正取引規制の適用のあり方について検討している。


掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

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