金融研究 第37巻第2号 (2018年4月発行)

ヘッジ取引におけるデリバティブ信用評価調整の影響についての考察

川上高志

本研究では、デリバティブの信用評価調整がヘッジ取引の有効性に及ぼす影響について、シミュレーションにより定量的な分析を行う。数値検証の結果、安定的な市場環境では、信用評価調整がヘッジの有効性に及ぼす影響は限定的であり、基本的にはヘッジ取引を妨げる要因とはならないが、信用リスクが顕在化するストレス期では、ヘッジの有効性が低下しやすい状況となり、とりわけ、自己とカウンターパーティとの相対的な信用力の格差がヘッジの有効性に影響を与える要因となることが示された。さらに、本研究の分析結果を踏まえて、信用評価調整がヘッジの有効性に与える影響を低減するために、金融実務で採用されている信用評価調整の削減方法を確認したうえで、それを会計上反映させることの可否について言及する。

キーワード:ヘッジ会計、IFRS、デリバティブ取引、信用評価調整、ヘッジ非有効性


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