金融研究 第36巻第4号 (2017年10月発行)

国際的な資金移動取引における仲介銀行の位置づけ:統一商事法典(UCC)第4A編の解釈を巡る米国の裁判例の変遷

瀧谷聡子

国境を越えた資金移動取引は、電子資金移動(Electronic Fund Transfer)によるのが一般的である。また、遠隔地にいる資金の送り手と受け手がコルレス関係になく、かつ、ドル決済取引の場合には、国際的な金融取引の中心地である米国ニューヨーク州の銀行が、仲介銀行として資金移動取引の橋渡しをすることが多い。米国には、こうした資金移動取引を含む銀行間や企業間の大口の資金移動取引を対象とする統一商事法典(UCC)第4A編「資金移動(Funds Transfers)」が存在している。なかでも、UCC第4A編には、資金の送り手や受け手の債権者が債権の保全または執行を図って、仲介銀行のもとにある移動中の資金を差し押さえ、または差し止めることを想定し、これを防止するための規定が存在しており、国際的な資金移動取引においては、これらの規定の適用が問題となるケースがある。しかし、こうしたケースについての米国の裁判所の判断には揺らぎがみられ、未だ十分な理論が構築されているわけではない。
本稿は、UCC第4A編の概要を整理したうえで、移動中の資金に対する仮差押えの可否を巡る裁判例の変遷を辿り、さらに、アルゼンチン国債の利払差止命令が問題となった近年の裁判例と議論を紹介するものである。

キーワード:UCC第4A編、電子資金移動、EFT、仲介銀行、海事法、仮差押え、差止命令


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